中古住宅の購入や店舗の入居を検討する際、建物の中にいて「少し傾いている気がする…」と不安に感じたことはありませんか?
建物の傾きは、居住性に影響するだけでなく、「地震に弱いのではないか?」という構造面での懸念を抱かせる要因にもなります。
今回は、建物の傾きに関する法的な基準と、耐震診断における構造設計者としての専門的な見解について解説します。
1. 「品確法」における傾きの基準とは?
建物の傾斜の基準としてよく用いられるのが「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」です。
この法律に基づく指標では、中古住宅の場合、建物の傾斜の基準値は「1mにつき6mm以下」に収まることとされています。
しかし、ここで注意していただきたい点があります。
品確法の基準は、主に「品質の確保」を目的としています。
つまり、この数値は「耐震性そのもの」を示すものではなく、居住の快適性やドアの開閉のしやすさ、施工精度といった品質面に関する指標なのです。
2. 「傾斜の数値」だけで耐震性のNGは決まらない
では、構造的な安全性を測る「耐震診断」において、建物の傾きはどのように評価されるのでしょうか。
もちろん、意図しない建物の傾斜は、構造的な問題や地盤のトラブルを抱えているサインであることが多いのは事実です。
しかし構造的な観点では、建物の傾きに対して「何mm/m傾いていたら耐力上NGとなる」といった明確な数値による許容基準は、基本的には設けられていません。
極端な例を挙げると、現代建築ではデザインとして意図的に柱を斜め(セットバックなど)にして建てることもあります。また、昔の建物の施工精度の問題で柱が斜めに立ってしまったケースであっても、部材そのものに必要な耐力が確保されていれば、建物全体を十分に支えることができるからです。
実際の耐震診断では、傾斜の数値を単独で合否の基準にするのではなく、ひび割れなどの他の劣化事象とあわせて総合的に判断し、評価係数として計算に反映させます。
3. 注意すべき「進行形の傾斜」
「数値だけでNGとはならない」とはいえ、決して安心できないケースが存在します。
それは、「経年により現在も傾斜が進行している状態」です。
昔の施工時の誤差で傾いたまま安定している状態と異なり、現在進行形で傾きが大きくなっている場合は、基礎部分の構造的な欠陥や、地盤の不同沈下などの問題が強く疑われます。
こうなると、単なる居住性の問題にとどまらず、建物の耐震性においても重大な問題となります。
まとめ
- 品確法の基準(1mにつき6mm以下)は品質の指標であり、直ちに耐震性を示すものではない
- 「傾きが〇〇mmだから構造的にNG」という一律の基準はなく、部材に耐力があれば建物を支えることは可能
- ただし、現在も進行している傾斜は、構造や地盤の深刻な問題を抱えている可能性があり危険
建物の傾斜や構造に関するご相談はお任せください
建物の傾きには、床のみの傾き、建物全体の傾き、地盤沈下など様々な原因が考えられます。
ご自身の感覚だけで判断せず、気になる場合は構造の専門家による適切な現地確認や調査が重要です。
アルキテック株式会社では、構造設計の専門家として建物の状態検証や改修のご相談を承っております。









