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建築構造専門家が解説する「ラーメン構造」と「壁式構造」の違いとメリット・デメリット

建物の安全性、快適性、そして資産価値を左右する最も重要な要素、それが「建築構造」です。普段は壁や天井に隠れて目にすることはありませんが、この「骨格」が、地震や台風といった自然の力から私たちの暮らしを守り、日々の快適さを支えています。建築を計画する際、この骨格をどのように組むかは、間取りやデザインの自由度、さらには将来のライフスタイルの変化への対応力にまで深く関わる、非常に重要な選択です。

建築構造には様々な種類がありますが、特に鉄筋コンクリート(RC)造の建物で広く採用されている代表的な工法が「ラーメン構造」と「壁式構造」です。この二つは、力の支え方から空間の作り方まで、その特性が大きく異なります。

私たちアルキテック株式会社は、建築構造と建築環境の専門家集団として、誠実で創意工夫を凝らした設計と技術コンサルティングを通じて、お客様一人ひとりの理想の建築を実現するパートナーです 。このページでは、安全で快適な空間づくりの第一歩として、これら二つの基本的な構造形式について、その仕組みからメリット・デメリット、そして見分け方まで、専門家の視点から分かりやすく解説します。

「フレーム」で支える:ラーメン構造を理解する

ラーメン構造とは?

「ラーメン」と聞くと食べ物を連想されるかもしれませんが、建築におけるラーメンは、ドイツ語で「額縁」や「枠」を意味する “Rahmen” に由来します 。その名の通り、垂直な「柱」と水平な「梁」を強固に組み合わせ、まるでジャングルジムのように頑丈な枠(フレーム)を形成して建物を支える構造です

この構造の最大の特徴は、柱と梁の接合部が「剛接合(ごうせつごう)」という方法で一体化されている点にあります 。剛接合とは、接合部分が変形しないように非常に頑丈に固定されているため、地震のような大きな横からの力が加わっても、柱と梁の角度が直角のまま変わらない仕組みです 。この強固なフレームが建物の骨格となるため、後述する壁式構造のように構造を支えるための壁(耐力壁)を必要としないのが大きな違いです。

仕組み:フレームで力を受け流す

ラーメン構造の建物が地震の揺れに耐える仕組みは、その「しなやかさ」にあります。地震によって水平方向の力が加わると、剛接合されたフレーム全体が一体となって変形し、柱や梁が「しなる」ことで地震のエネルギーを吸収・分散させます 。これは、硬い棒のようにただ踏ん張るのではなく、柳のように揺れを受け流すことで、建物全体の倒壊を防ぐという考え方に基づいています。

この性質は、単に「頑丈」という言葉だけでは表現できません。専門的には「靭性(じんせい)に富む」と表現され、破壊されることなく大きく変形できる能力を指します。ラーメン構造の耐震性の本質は、この靭性にあり、揺れに対して柔軟に対応することで建物の安全性を確保する、非常に洗練された設計思想なのです。この特性を最大限に活かすためには、高度な構造計算が不可欠となります。

この構造は、鉄筋コンクリート(RC)造、鉄骨(S)造、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造などで広く採用されており、低層の戸建て住宅から超高層ビルまで、あらゆる規模の建物に対応できる汎用性の高さも特徴です 。近年では技術開発が進み、木造でもラーメン構造を実現できるようになっています

「ボックス」で支える:壁式構造を理解する

壁式構造とは?

ラーメン構造が柱と梁という「線」で建物を支えるのに対し、「壁式構造」は、柱や梁の代わりに、厚く強固な「壁」と「床」という「面」で建物を支える構造です 。床、天井、そして四方の壁の6つの面が一体となった、頑丈な箱(ボックス)のようなイメージです 。

この構造の主役は「耐力壁」と呼ばれる、鉄筋コンクリートで造られた分厚い壁です 。この耐力壁が、建物の重さ(鉛直荷重)と、地震や風による横からの力(水平荷重)の両方を支える重要な役割を担います。ラーメン構造のように独立した柱や梁がないため、室内に凹凸が生まれにくいのが特徴です。この工法は主に鉄筋コンクリート造で用いられ、「WRC造(Wall Reinforced Concreteの略)」とも呼ばれます

仕組み:面で力を分散させる

壁式構造の強さは、その「剛性」にあります。地震の揺れのような力が加わると、その力は特定の柱や梁に集中するのではなく、建物を構成する壁や床という広大な「面」全体に分散されます 。これにより、建物全体が一体となって揺れに抵抗するため、変形が非常に少なく、極めて高い耐震性を発揮します

ただし、この強固な構造を支える鉄筋コンクリートの壁は非常に重いため、建物の高さには制約があります。高層になると建物自体の重さが過大になり、基礎への負担が大きくなるため、一般的には5階建て以下の中低層の建物で採用されることが多い工法です

一目でわかる比較:ラーメン構造 vs 壁式構造

二つの構造の特性を理解するために、それぞれの特徴を一覧表にまとめました。ご自身の建築計画において、何を優先したいかを考える際の参考にしてください。

特徴ラーメン構造壁式構造
支持メカニズム「線」(柱・梁)で構成されたフレームで支える 「面」(壁・床)で構成されたボックスで支える
設計の自由度高い。 大開口の窓、広々としたリビング、吹き抜けなど自由な空間設計が可能 低い。 構造を支える耐力壁の配置に制約があり、窓の大きさや間取りの自由度が制限される
室内空間柱や梁が室内に出っ張り、凹凸ができることがある 柱や梁の出っ張りがなく、壁や天井がフラットですっきりした空間。家具の配置がしやすい
耐震性良好(靭性が高い)。 フレームがしなやかに変形し、地震エネルギーを吸収する 非常に高い(剛性が高い)。 箱状の構造全体で力を分散し、変形を最小限に抑える
リフォームの柔軟性高い。 構造に関係ない間仕切り壁は、比較的自由に撤去・移動が可能 低い。 建物を支える耐力壁は撤去・変更ができないため、大規模な間取り変更は困難
適した建物の高さ万能。 低層の戸建てから超高層ビルまで幅広く対応可能 主に中低層。 重量の問題から、一般的に5階建て以下の建物に多い
断熱性・遮音性間仕切り壁の仕様による。壁が薄い場合は性能が低くなる可能性がある 一般的に優れる。 厚いコンクリートの耐力壁が、高い断熱性と遮音性を発揮する
コスト部材が大きくなりがちで、接合部の施工も複雑なため、コストは高くなる傾向がある 比較的シンプルな工法のため、一般的にコストを抑えやすい

より深く知る:各構造のメリットとデメリット

上記の比較表を基に、それぞれの構造がもたらす具体的な利点と注意点をさらに詳しく見ていきましょう。

ラーメン構造の利点と注意点

メリット

  • 比類なき設計の自由度 ラーメン構造最大の魅力は、その圧倒的な設計の自由度です 。柱と梁で構造が完結するため、壁の配置に縛られません。これにより、壁一面の大きな窓や、リビングとダイニングを一体化させた開放的な大空間、ダイナミックな吹き抜けなど、建築家の創造性を最大限に活かしたデザインが実現可能です 。
  • 将来の変化に対応できる柔軟性 ライフステージの変化に合わせて間取りを変更しやすい点も大きなメリットです 。子供の成長に合わせて部屋を仕切ったり、独立後に壁を取り払って広い趣味の空間を作ったりと、将来のリノベーションに柔軟に対応できます。建物は長く使うものだからこそ、この「可変性」は重要な資産価値と言えるでしょう 。

デメリット

  • 室内の凹凸とデッドスペース 建物を支える柱や梁が室内に張り出すため、壁際に凹凸ができてしまうことがあります 。これにより、家具の配置が制限されたり、デッドスペースが生まれたりする可能性があります。近年では、柱や梁をバルコニー側など建物の外に出す「アウトフレーム工法」といった技術でこの問題を解消することもありますが、コストや設計上の制約も伴います 。
  • コストと施工の複雑さ 強固な剛接合を実現するためには、精度の高い施工技術が求められます。また、大空間を支えるためには柱や梁の部材も大きくなる傾向があり、材料費や加工費を含めた建築コストは、壁式構造に比べて高くなることが一般的です 。

壁式構造の利点と注意点

メリット

  • 優れた安全性と安心感 壁という「面」で支える構造は、地震に対して非常に高い剛性を誇ります 。揺れによる建物の変形が少ないため、構造体はもちろん、内外装の損傷も抑えられ、災害後の生活再建においても有利に働きます。この揺るぎない安定感は、何物にも代えがたい安心につながるでしょう 。
  • 美しく効率的な室内空間 柱や梁の出っ張りがない、すっきりとした室内空間は壁式構造ならではの美点です 。壁面がフラットなため、家具をぴったりと配置でき、空間を無駄なく最大限に活用できます。見た目の美しさだけでなく、生活動線の効率化にも貢献します 。
  • 高い快適性と省エネルギー性 構造体である厚いコンクリートの壁は、それ自体が優れた断熱材・遮音材として機能します 。外の騒音を効果的に遮断し、静かでプライベートな空間を保ちます。また、コンクリートの持つ「蓄熱性」により、室内の温度変化が緩やかになり、冷暖房の効率が向上。夏は涼しく冬は暖かい、快適で省エネルギーな暮らしを実現します 。

デメリット

  • 設計上の制約 建物の安全性を確保するために、耐力壁をバランス良く配置する必要があるため、ラーメン構造のような大胆な大開口や、完全に壁のないオープンなプランは実現が困難です 。デザインの自由度よりも、構造的な合理性が優先されます。
  • 固定された間取り 建物の骨格そのものである耐力壁は、後から取り払ったり、窓を新設したりすることは基本的にできません 。つまり、新築時に決定した間取りが、その建物の生涯の間取りとなります。将来的な大規模リノベーションを視野に入れている場合には、大きな制約となります。

ここで重要なのは、構造の選択が単に空間の使い勝手や初期コストに影響するだけでなく、建物の生涯にわたるエネルギー性能、すなわち「ライフサイクルコスト」にも直結するという視点です。例えば、壁式構造は断熱性に優れ、日々の冷暖房コストを抑える効果が期待できます。一方、ラーメン構造で大きなガラス面を採用する場合、高性能な断熱サッシやガラスを選ばなければ、エネルギー効率が低下する可能性があります。

私たちアルキテックは、構造設計だけでなく、省エネ計算や設備設計といった建築環境分野の専門知識も統合的に提供しています 。構造計画の初期段階から環境シミュレーションを行うことで、デザインの自由度、耐震性、そして長期的なエネルギー性能といった複数の要素をトータルで最適化し、お客様の建物が将来にわたって高い価値を維持できるよう、専門的な知見からサポートします。

あなたの建物の構造を見分ける方法

中古マンションの購入やリノベーションを検討する際、その建物がどちらの構造で建てられているかを知ることは非常に重要です。専門家でなくても、いくつかのポイントを押さえることで、おおよその見当をつけることができます。

  1. 間取り図を確認する 最も簡単な方法です。間取り図の部屋の四隅や壁の中に、黒く塗りつぶされた四角形があれば、それは「柱」を示しており、ラーメン構造である可能性が高いです。そのような表記がなく、壁が全体的に太い線で描かれている場合は、壁式構造と考えられます 。
  2. 建物の階数を見る 前述の通り、壁式構造はその重量から高層建築には向きません。もし建物が6階建て以上であれば、ほぼ間違いなくラーメン構造です 。5階建て以下の場合は、どちらの可能性もあります。
  3. 室内を観察する 実際に室内を見て、天井から梁が下がっていたり、壁から柱が突き出ていたりすれば、それはラーメン構造の明確な特徴です 。反対に、壁と天井の境目がフラットですっきりしていれば、壁式構造の可能性が高いでしょう 。
  4. 壁を軽く叩いてみる(内見の際に) ラーメン構造の場合、室内の間仕切り壁の多くは構造的な役割を持たないため、中が空洞になっています。軽く叩くと「コンコン」という軽い音がします。一方、壁式構造の耐力壁はコンクリートが詰まっているため、「ゴツゴツ」という鈍く低い音がします 。

最適な構造を選ぶために:専門家と共に考える

ここまで見てきたように、ラーメン構造と壁式構造には、それぞれに優れた点と考慮すべき点があります。「どちらが優れているか」という問いに、唯一絶対の答えはありません。重要なのは、「あなたのプロジェクトにとって、どちらが最適か」という視点です。

  • 開放的な大空間や将来の間取り変更の可能性を最優先するなら、ラーメン構造が適しているでしょう。
  • 揺るぎない耐震性能と、静かで快適な室内環境、効率的な空間利用を重視するなら、壁式構造が有力な選択肢となります 。

私たちアルキテックは、特定の工法に固執することなく、鉄筋コンクリート造、壁式RC造、鉄骨造、木造、さらには薄板軽量形鋼を用いたCFS建築まで、あらゆる構造形式の設計に対応できる幅広い知見と実績を持っています 。これにより、お客様の要望、予算、敷地条件などを総合的に判断し、真に最適な構造計画を偏りなくご提案することが可能です。

また、選択は必ずしも二者択一ではありません。例えば、ラーメン構造の自由度を活かしつつ耐震性をさらに高めたいというご要望があれば、主要な部分に耐震壁を組み合わせる「耐震壁付ラーメン構造」というハイブリッドな手法もあります 。あるいは、制振ダンパーのような先進技術を導入し、揺れそのものを吸収することで、より高いレベルの安全性を実現することも可能です 。

アルキテックは、単なる設計者ではなく、企画段階から竣工後の検証まで、お客様に寄り添い続ける「技術パートナー」です 。構造設計はもちろん、耐震診断や補強設計、さらには大学との連携による研究開発まで、建築構造に関するあらゆる課題解決をサポートします

未来を見据えた建築のために

ラーメン構造の「自由性」と、壁式構造の「堅牢性」。それぞれの特性を深く理解することは、満足のいく建築を実現するための不可欠なプロセスです。最高の建築とは、単にデザインが美しい、あるいは頑丈なだけでなく、そこに住まう人、利用する人の目的や価値観に最も適した構造が選ばれているものだと私たちは考えます。

これから建築を計画される方も、すでにお持ちの建物の安全性に疑問をお持ちの方も、建築構造に関するご相談は、ぜひ私たちアルキテックにお任せください。「構造よろず相談」として、専門家集団が持つ知見を活かし、皆様のあらゆる疑問や課題に誠実にお応えします

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