既存不適格建物(木造2階建てなど)の増改築を行う際、当時の建築基準法に適合していたかを証明する作業は、過去の仕様規定を紐解く必要があり非常に骨が折れる業務です。
今回は、昭和56年(1981年)の法改正以前に建てられた旧耐震基準の木造建築物における「風圧力に対する必要壁量の計算」について、現在の規定との決定的な違いを解説します。
昭和56年改正を境に変わった「見付面積」の扱い
古い建物の確認申請時の適法性をチェックする際、審査側から「昔の建物は、風圧力計算の見付面積が現在より厳しかった」と指摘されることがあります。これは、昭和56年の法改正によって見付面積の計算方法に緩和措置が設けられたためです。
風圧力に対する必要壁量を算出する際、新旧で以下の違いがあります。
- 現在の規定(昭和56年改正以降):
その階の見付面積から「床面からの高さが1.35m以下の部分の見付面積」を減じたものを対象面積として計算できる。(昭和56年建設省告示第1100号第3に基づく) - 昭和56年改正前の規定(旧耐震):
上記の1.35m以下の部分を減じるという緩和規定が存在していません。
つまり、昭和54年などに建てられた改正前の建築物では、「床面から上の全見付面積(投影面積まるごと)」を対象として計算する必要がありました。
見付面積の差がもたらす影響
壁量計算において見付面積に掛ける係数(乗ずる数値)自体は、現在と同じ「50(cm/㎡)」(※特定行政庁が指定する多風区域等は割り増しあり)です。しかし、この「1.35mの面積控除ができない」という点が、必要壁量に大きな影響を与えます。
例:建物の見付幅が10mある場合
現在なら「10m × 1.35m = 13.5㎡」の面積を風圧力の計算から除外できますが、昭和56年改正前はこの13.5㎡もすべて見付面積としてカウントされます。
この差分(13.5㎡)に係数「50」を掛けると、675cm(6.75m)となります。同じ規模の建物でも、現在より約6.75m分(壁倍率1.0の耐力壁で約6枚分強)も多く耐力壁を配置しなければ、当時の風圧力の基準を満たせなかったということです。
旧耐震時代ならではの「風圧力が決定打になる」現象
旧耐震基準の時代は、地震力に対する必要壁量(床面積に乗ずる数値)が現在よりも緩く設定されていました。
しかし、風圧力については上記のように見付面積が全投影面積で算定されるため、「地震力よりも風圧力に対する必要壁量の方が数値を上回り、結果的に風圧力が壁量設計の決定打になる」というケースが頻発していました。古い建物の構造を確認する際、この法改正の境界線と規定のバランスを知っておくことは非常に重要です。
申請時の適合を証明するための実務ポイント
昭和56年以前の既存建物が、当時の仕様規定で適法に建てられていたことを計算で証明するには、以下の手順が有効です。
- 現在の計算フォーマットで仕様規定の計算を行う
- 風圧力の項目のみ「1.35m以下の面積を差し引かずに、全見付面積」に修正する
- 上記の面積に係数(50等)を掛けて必要壁量を再算出する
過去の図面と照らし合わせ、当時の壁量でこの再計算した数値をクリアできていれば、建築当時の適法性を説明する根拠となります。既存改築の申請業務の際には、ぜひこの「昭和56年告示制定前は1.35mの控除なし」というポイントに注意して計算書を確認してみてください。
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