(2025年12月施行)「改正建設業法」、および(2026年1月施行)「中小受託取引適正化法(取適法)」について、構造設計・建築実務に関わる技術者の視点から要点を整理したものです。
これらの改正は、建設に関わるすべての企業間取引のルールを根底から変えるものであり、建設会社だけでなく、我々のような建築設計事務所にも大きな影響を及ぼします。
1. 設計者・エンジニアへの直接的影響(取適法の施行)
我々設計実務者に最も直接的な影響を与えるのが、下請法を大幅に改めた「中小受託取引適正化法(取適法)」の施行です。図面作成や模型制作などの業務委託において、受託側の権利が大幅に強化されます。
- 用語と概念の刷新:上下関係を連想させる「下請け」「親」という用語が廃止され、「中小受託事業者」「委託事業者」に変更されます。
- 対象範囲の拡大:従来の資本金基準に加え、従業員数の基準が新設されました。例えば、従業員300人超の企業から300人以下の企業(個人含む)へCAD図面作成などを発注する場合、新たに法の対象となります。
- 一方的な価格決定の禁止:受託事業者からの価格交渉の求めに対し、協議に応じなかったり、必要な説明を行わずに一方的に代金を決定する行為が固く禁じられます。
- 支払い条件の厳格化:手形による代金の支払いや、振込手数料を受託事業者に負担させることが禁止されます。
2. 施工・現場への影響(改正建設業法の施行)
深刻な技能者不足(過去約20年で386万人から299万人へ減少)を背景に、現場の職人へ適正な賃金を行き渡らせるための強力な規制が敷かれます。
- 「標準労務費」の勧告と下限値設定:中央建設業審議会が「労務費に関する基準」を作成・勧告し、これが著しく低い労務費を判断する実質的な下限値として機能します。
- 見積もりの「一式」計上見直し:見積書の作成時、労務費や材料費などを合算する「一式」計上ではなく、内訳を分離して金額の根拠を明示することが求められます。
- 不当な見積もりの禁止:必要な労務費を著しく下回る金額での見積もり作成や、見積もりの変更依頼が禁止されます。
- 契約変更への誠実対応:資材高騰などに伴い下請け会社から契約変更の協議を申し出られた場合、元請けは誠実に協議に応じる努力義務を負います。
3. 発注者(クライアント)への影響と約款の変更
国の規制は元請け・下請け間だけでなく、民間工事の発注者にも及びます。発注者側にも適正な労務費を確保する責任が求められます。
- 不当な契約締結の禁止:民間工事であっても、必要な労務費を著しく下回る金額での契約締結が禁止されます。
- 民間請負契約約款の大型改正:請負代金内訳書へ材料費や法定福利費を明示することや、工期延長・代金変更の請求理由に「資材の供給不足や高騰」が明確に追加されました。
- 「コミットメント制度」の新設:発注者が元請けに対し、下請け間の労務費支払い状況を示す書類の写しなどの提出を請求できる制度が約款の原則条項として追加されました。
4. 今後の実務対策と技術的アプローチ
これからの建設・設計実務においては、単なる「値引き」による受注競争は法律上許容されなくなります。我々技術者は以下の視点で業務と見積もりを再構築する必要があります。
コスト縮減を図る際は「単価の圧縮」ではなく、客観的データに基づいた「技術的・合理的な歩掛かりの削減」を提示することが、これからの絶対条件となります。
- 労務単価の削減は違法リスク:労務単価を国の示す適正水準から削って見積もりを下げる行為は、建設業法違反となる恐れがあります。
- 「歩掛かり(生産性)」の向上によるコスト削減:労務単価は下げられませんが、生産性を高めて「歩掛かり(作業時間・人数)」を小さく見積もることは合法です。
- DX・AIを活用した根拠の提示:歩掛かりを小さく見積もる場合、その生産性の高さを客観的に証明する根拠が必須となります。根拠なき削減は違法と見なされる可能性があります。
適正なプロセスで、確かな構造設計を。
今回の法改正は、見積もりや契約の透明性が厳格に求められる転換点となります。私たちアルキテックでは、常に最新の法規に基づき、根拠のある透明性の高いプロセスで構造設計サービスを提供しております。
法改正に対応した設計体制や、構造計算、設計実務に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。


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