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令和7年施行 改正建築基準法対応:木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2025年版)改訂の要点と実務への適用

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本レポートは、2025年版「木造軸組工法住宅の許容応力度設計(グレー本)」に関する追加講習会の内容を網羅的に整理したものです。令和7年の建築基準法改正に伴う仕様規定の再編、最新の知見に基づく構造計算の高度化、および実務上質問が多かった項目の明確化について、構造設計の実務に直結する変更点を中心に体系化しています。

2025年版 木造軸組工法住宅の許容応力度設計 改訂のイメージ図
2025年施行の建築基準法改正に伴う構造設計のアップデート

1. 建築基準法改正に伴う全体方針と構造設計ルートの再編

四号特例の縮小に伴い、構造計算ルートの分類基準が「延べ面積300㎡以下、高さ16m以下」へと明確化されました。これに伴い、令第46条の壁量計算関連規定はすべて昭56建告第1100号に移管・再編されています。

1.1 構造設計ルートの新たな選択肢

仕様規定の壁量計算を行わず、構造計算(許容応力度計算)で水平力に対する検討を行うルートとして、従来の「令46条2項ルート」に加え、新たに「告示1100号第6ルート」が新設されました。

  • 令46条2項ルート: 昭62建告第1898号に基づくJAS材(構造耐力上主要な柱・横架材)の使用が必須。
  • 告示1100号第6ルート: JAS材の要件は不要となるが、以下の厳しい適用条件を満たす必要があります。
    • 地階を除く階数が3以下
    • 耐力壁の許容せん断耐力が 13.72kN/m (壁倍率7倍相当)以下
    • 地震力の耐力壁負担比率が8割以上(ラーメン等との併用制限)

実務においては、使用する木材の調達条件(JAS材の有無)と、計画する耐力壁のスペックによってルートの使い分けが求められます。

2. 耐力壁・鉛直構面に関する仕様変更と計算の実務

2.1 準耐力壁・腰壁等の壁量算入

これまで品確法の性能表示計算でのみ考慮されていた「準耐力壁」や「腰壁・垂れ壁等」が、告示1100号第1第十二号として位置づけられ、基準法上の存在壁量への算入が可能となりました。

【実務上の注意】
耐力壁が必要壁量の1/2未満の状態で準耐力壁等を算入する場合、柱の折損等による急激な耐力低下が生じないことを確認された仕様(別表第10)である必要があります。

2.2 筋かい耐力壁の仕様緩和と階高による低減

材料と接合部の緩和: 大臣認定を取得すれば、木材・鉄筋以外の新材料も使用可能となりました。また、端部接合については「少なくとも一方は仕口に緊結、もう一方は柱等に緊結」に緩和され、K型・多段筋かいの採用が容易になりました。

階高が高い場合の低減係数: 筋かいが標準長さ(L0=3.0m)を超える場合、座屈の影響を考慮した低減係数 αL=(L0/Lb)n を単位長さあたりの許容せん断耐力に乗じる必要があります。

  • 圧縮筋かい: n=3
  • 引張筋かい: n=1 (引張耐力は長さに反比例するため、単位長さあたりでは実質低減なし)

2.3 小開口付き耐力壁の取り扱い

換気扇等の小開口を設ける場合、以下の条件を満たせば「開口なし」と同等の剛性・耐力として扱えます。

  • 筋かい耐力壁: 筋かいや接合部を切り欠かず、部材間のスペースに収めること(穴径が L/2 までなら補強付きで可などの詳細規定あり)。
  • 面材耐力壁: 面材の短辺寸法 L と厚さ t に対し、穴径が 12t 以下かつ L/6 以下であれば補強不要(1枚あたり2箇所まで)。それ以上は周囲に受け材等の補強が必要。

2.4 大壁仕様の入隅部の納まり

入隅部に大壁仕様の耐力壁を設ける際、受け間柱を柱に釘打ちして一体化することで大壁として評価できます。壁倍率(2.5倍以下か、4.3倍以下か)に応じて、間柱の断面寸法と釘ピッチ(300mm 以下または 120mm 以下)の規定が明記されました。

3. 壁配置(偏心率・四分割法)における準耐力壁等の取り扱い

構造計算において準耐力壁等を算入した場合、偏心率の計算においても必ず準耐力壁等を剛性に算入しなければなりません(整合性の原則)。

一方、四号建築物等で壁量計算(四分割法)を行う場合は扱いが異なります。

  • 耐力壁が必要壁量の1/2以上: 耐力壁のみで四分割法を検証。
  • 耐力壁が必要壁量の1/2未満: 準耐力壁等を含めて四分割法を検証。

4. 水平構面・横架材・基礎・接合部等に関する技術的改訂

4.1 水平構面の開口部割増し

床構面に大きな吹抜けがある場合、吹抜け周辺のエリアに応力が集中するため、せん断力に割増係数 Cmax を乗じて検定することが推奨値として明文化されました。

4.2 基礎アンカーボルトの定着と基礎梁のせん断補強

アンカーボルト引張計算の省略条件: M12は定着長さ 250mm 以上、M16は 360mm 以上確保し、かつ先端に有効なフックや定着板を有することが条件として明確化されました(丸鋼アンカーの場合はフック等必須)。

基礎梁のRC許容せん断耐力: せん断補強筋(あばら筋)の効果を見込む場合、「端部が135度以上のフック付き」または「認定された全強度鉄筋交差溶接」で主筋を拘束していることが必須条件として追記されました。結束線のみの固定では適用外となります。

4.3 横架材のたわみ制限

長期(常時)荷重に対する床梁のたわみ制限比は 1/250 以下(告示指定)ですが、屋根等その他の横架材についての推奨値(例:屋根の長期常時 1/200、短期積雪時 1/150 等)が新たに設定されました。また、長期の変形増大係数は「2」と明記されています。

4.4 柱頭柱脚接合部(引抜力計算)

N値計算等において、使用する耐力壁の実質的な壁倍率が7倍を超える場合、計算上の上限値である7倍ではなく、「実態上の倍率」を用いて引抜力を算定しなければならない旨が強調されています。

5. 第3章(詳細計算法)及び第4章(試験評価方法)の高度化

中大規模木造建築物の増加と最新の研究成果を反映し、詳細計算法と試験方法が大幅にアップデートされました。

5.1 面材張り耐力要素の詳細計算法の変更

  • 釘配列諸定数の計算式刷新: 終局耐力を決定づける「釘配列降伏終局比 Cxy」等の計算式が根本から変更され、中大規模グレー本と整合が図られました。旧版と比較して終局耐力が高く評価される(値が大きくなる)傾向にあります。
  • 座標設定の自由化: 旧版の「面材短辺をX方向」とするルールが撤廃され、実際の配置方向に合わせた計算が可能となりました(単位は cm から mm へ統一)。

5.2 面材仕様の追加と配置ルール(へりあき)の合理化

  • 材料の追加: 詳細計算法の適用対象に「構造用MDF」と「構造用パーティクルボード」が追加され、各種せん断弾性係数と釘1本あたりのせん断耐力(表3.3.1)が新設されました。合板についても、樹種グループの制限が一部緩和されています。
  • 釘の縁端距離: 面材のへりあきや軸組の縁端距離が、従来の「10mm や 15mm 以上」といった固定値から、「接合具径 d の5倍以上かつ 10mm(または 20mm)以上」という合理的な基準に改められました。

5.3 試験方法・評価方法の見直し(第4章)

  • 面材くぎ試験の評価範囲: M-θ 包絡線を完全弾塑性モデルへ置換する際、面材のせん断変形を含まない状態での評価範囲が 1/20rad. 以下に設定されました。これにより耐力壁としての評価(1/15rad. 以下)と力学的整合性が取られています。
  • 床・屋根構面のせん断耐力試験: 根太-梁、垂木-桁接合部の純せん断性能を正しく評価するため、加力方法が「圧縮加力」から「引張加力」へと変更されました(圧縮による面外への孕み出しやねじれを防ぐため)。

実務への総括

2025年版の改訂は、法改正への追従だけでなく、「力学的実態に即した評価への移行(詳細計算法の式変更や階高低減)」「実務上のグレーゾーンの解消(小開口や入隅の扱い)」「施工品質を担保するための仕様の厳格化(基礎RCあばら筋のフック、アンカー定着長)」の3点が中核をなしています。

構造設計実務においては、壁量計算と許容応力度計算における「準耐力壁」の扱いの違いや、高耐力壁(7倍超)使用時の基礎・接合部への応力伝達の再確認がこれまで以上に重要となります。

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